研究概要 |
1,小型気圧調節装置を用いて緩徐な気圧低下環境に曝露し,気圧変動量・スピードを変化させながら圧刺激素子を用いた圧刺激法により疼痛増強作用の有無を調べた。坐骨神経損傷モデルでは1時間に10hPa以上,脊髄神経損傷モデルでは1時間に5hPaの減圧スピードによっても,疼痛行動の増強効果がみられた。これらの変化スピードは,実際の気象変化(前線通過)にみられる気圧変化に相当する緩徐なものである。 2,坐骨神経損傷ラットから術後1日〜19日間,無麻酔・無拘束時の血圧・心拍数を連続記録した。血圧・心拍数ともに,術後早期(1〜7日目)には,術前値に比べ明らかに増加(交感神経優位)したが,その後は低下し,術後15〜19日目には逆に低値を示すようになった(副交感神経優位)。術後4,7,11,15,19日目に27hPaの気圧低下環境に暴露したところ,どの実験日においても術前日に見られた効果と同程度の血圧・心拍数の増加がみられた。よって,慢性痛モデルには術後経過によって基礎の自律神経活動には交感神経優位→副交感神経優位への変化がみられるが,環境ストレス(気圧低下)に対する反応性には違いがないことが分かった。 3,ネンブタール麻酔下では,気圧低下による血圧・心拍数の増加,腰部交感神経活動の増強が観察されないことが分かっている。これが麻酔薬の影響であると考え,除脳ラットを作製して血圧・心拍数と腰部交感神経活動を連続記録し,気圧低下環境での変化を解析した。種々の筋弛緩薬を用いてその影響を調べたところ,ガラミン投与時のみにおいて,血圧・心拍数・腰部交感神経活動すべてが増加することがわかった。 4,麻酔下のラットの前庭神経核にガラス電極を挿入し,気圧低下に反応性を示す神経核細胞を探索した.これまで記録した25ユニットのうち,5ユニットが27hPaの気圧低下に明らかな反応性を示した。
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