研究概要 |
ラットを使い、運動時の高次中枢神経活動と循環動態の関係を明らかにするために記憶に関与する海馬CA1領域ニューロン活動と循環動態の相同性について検討した。特に、自発運動時と睡眠レム期の海馬CA1領域の神経活動と循環反応を比較することにより、セントラルコマンドの実体解明を試みた。 ラット自由行動下の海馬CA1領域の神経活動、海馬CA1領域の血流量、脳波、筋電図、心電図、動脈圧、中心静脈圧を連続測定した。海馬CA1領域の神経活動はMicro-wire arrays電極を自作し、脳内に慢性留置した。また、光ファイバーのレーザードップラーフロープローブを海馬CA1領域に慢性留置し血流量を計測した。海馬CA1領域血管抵抗を動脈圧と中心静脈圧の圧差と海馬CA1領域血流量から算出した。睡眠期の判断は脳波と筋電図より、覚醒・運動時の行動は目視により観察し、Grooming, Moving(探索行動など自発行動),Quiet awakeの3つに分類した。 脳波のtheta/delta比は,レム期に19 2%,Moving期に10 2%ノンレム期に比べて有意に増加し、theta周波数領域の優位性が示された。同様に、海馬CA1領域血流量は、睡眠レム期に最も多く、ノンレム期に比較して26.4±2.2増加した。ついで、探索行動などをおこなうMoving期に12.2±1.6%増加した。動脈圧は、レム期に115±1mmHg,Moving期に114±1mmHgに増加した。以上のレム期とMoving期の比較により、末梢筋肉活動の関与が無い状態で、中枢神経活動そのものにより動脈圧が持続的に増加することが示された。Micro-wire arrays電極に関しては、運動時にノイズの混入があり、電極の形状など種種解決策を試みたが、満足出来る計測には至らなかった。
|