研究課題
基盤研究(C)
私たちは、細菌性内毒素(lipopolysaccharide; LPS)による発熱や炎症性(発熱性)サイトカインの産生に於ける心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide; ANP)の役割について検討した。その結果、LPSの静脈内投与による3相性発熱の2相目と3相目は、NP受容体拮抗薬の静脈内投与と脳室内投与により、それぞれ有意に増強した。しかし同拮抗薬は、サイトカインの静脈内投与による発熱に対して何ら影響を及ぼさなかった。脾臓に於けるサイトカイン産生をNP受容体拮抗薬は有意に促進した。ANPを静脈内あるいは脳室内に投与すると、LPSによる3相性発熱の2相目あるいは3相目は有意に抑制された。したがって、LPSの静脈内投与による発熱を脳の内外のNPが抑制しているものと推察される。一方、ANPが脳のmacrophageであるミクログリアの転写因子の活性化を抑制してLPSによるサイトカイン産生を抑制する可能性を究明した。その結果、LPS刺激により、ミクログリアのnitric oxide(NO)産生は増加した。ANPを作用させると、このNO反応は減弱した。さらに、ANPによるNO反応抑制はNP受容体拮抗薬によりブロックされた。LPS刺激によりinterleukin-1(IL-1)はタンパク、mRNAレベルで増加したがANPにより双方とも有意に抑制された。LPSによりマイクログリアの形態は球形から突起を持つ紡錘形に変化したが、その変化はANPにより抑制された。LPSによるミクログリアのNF-κBとAP-1の活性化は、ANPにより抑制された。以上すべての研究結果から、脳の内外のANPは転写因子の活性化の抑制を通してサイトカイン産生を抑制し、発熱を制御するものと考えられる。
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