研究課題
イヌの慢性完全房室ブロックモデルを用い、うっ血性心不全に対するリモデリングを合併した心房に対する臨床用量のカンデサルタンによる電気生理学的影響および抗心房細動作用を検討した。ビーグル犬の房室結節をカテーテルアブレーション法により焼灼し、心室補充調律が30-40bpmの完全房室ブロック犬を作製した。リモデリングが完成した3ヶ月以降に、カンデサルタン(12mg/body/day 4週間)を連日経口投与し(各n=7)、心房拍動数、平均血圧、心房間伝導時間および心房有効不応期に対する作用を評価した。さらに右心房を刺激間隔60ms、60Vで10秒間電気刺激することにより心房細動を誘発した。心房細動の誘発を各測定点において10回繰り返し、心房細動の平均持続時間および興奮周期を計測した。アンジオテンシンIIを単回静脈内投与(30ng/kg)し、AT1受容体抑制の程度を評価した。また血液中の神経体液性因子を薬物投与前後に測定した。カンデサルタンの投与により、これらの指標に有意な変化を認めなかったが、血漿ノルエピネフリン濃度は低下し、アンジオテンシンII濃度は上昇した。カンデサルタンは、アンジオテンシンIIの静脈内投与による昇圧反応を完全に抑制したが、心房問伝導時間、心房有効不応期および心房細動持続時間に作用を認めなかった。Kumagai Kらは心房高頻度刺激モデル犬を用いた研究で、カンデサルタンは心房細動を抑制することを報告しているが、使用した評価モデルの病態やカンデサルタンの投与飛の差異が結果の違いの原因かもしれない。
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