研究概要 |
骨髄を利用した再生医療は、すでに臨床においても実用段階に入ったとも考えられる。特に、未分化間葉系細胞を用いた実験系では、これらの細胞を標的細胞に分化・誘導させることで様々な臓器特異性の細胞を惹起して活用できるものとして期待されている。一方、細胞を分化・誘導させた後、正常細胞として機能させるためにセルサイクルの制御といった作業も必要となる。この点の未成熟さが分化・誘導に成功した細胞の癌化に繋がっている。我々は、今までに血液中に線溶系因子について研究を行なってきたが、その過程でタンパク溶解系として機能するuPA-uPAR-PAI-1の系が癌化する細胞の制御機構に関与する可能性を見いだしてきた。また、plasmin-antiplasminの系では様々な細胞表面上のサイトカインが、局所的に存在するplasminによって活性かされる事を見いだし、この反応系を抑制する事で瞬時に反応する細胞応答を制御できる可能性を報告してきた。今回の研究計画では、このようなこれまでの研究成果をふまえて、さらに発展させ様々な細胞への分化・誘導だけでなく細胞制御を兼ね備え薬理学的な治療効果を発現できるような系の確立を目標とした。本研究は、平成17,18年の2年間に渡るもので、17年度では主に多様な細胞の細胞内情報伝達系と線溶系各因子の関係について様々な探求を試みた。その結果、特に眼科領域において神経細胞のアポトーシスに関与するNMDA受容体について線溶系因子との新たな関わりが解明された。網膜や視神経細胞の再生といった研究領域に重要なデータを得たものと考えられる。また、現在皮膚科領域での上皮および真皮の再生に関して研究が進んでおり、新たな論文を投稿している。18年度においても引き続き研究成果が発表できるものと考えている。
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