研究概要 |
血管平滑筋は分化の進んだ筋線維の発達した「収縮型」、および未分化で増殖をする「合成型」の2種類の細胞に形質変換する。平成17年度までの研究で培養血管平滑筋細胞をPDGF処理によって合成型様細胞、酪酸ナトリウム(Na-butyrate,NaB)処理によって収縮型様細胞を作製し、それらの細胞に特異的な遺伝子のサブトラクションライブラリーを作成することによりスクリーニングした。PDGF特異的ライブラリーからは230クローンが、NaB特異的ライブラリーからは160クローンの遺伝子が特定できた。平成18年度にはこれらのクローンをナイロン膜にドットブロットした膜を4枚ずつ用意し、特異性を確認するため仮想的Northernハイブリダイゼーションをおこなった。使用したプローブは、サブトラクションした2種類のcDNA、およびサブトラクション前の2種類のcDNAである。その結果有意に特異性が認められたものがPDGF処理細胞では15クローン、NaB処理細胞では19クローンに集約された。そこでこれらのクローンに対してプライマーを作製し、リアルタイムPCRをおこなってPDGF処理細胞とNaB処理細胞での発現量に有意に差があるかを確認した。2種類の細胞で発現量の差が2倍以上認められたものはCa^<2+>結合蛋白質であるS100A4,S100A6、およびα-actinなどであった。そこでS100A4,S100A6の全長をクローニングし、大腸菌で発現蛋白質を作成した。さらにこの発現蛋白質とCa^<2+>依存的に相互作用する因子3種類を培養平滑筋細胞から単離することができた。これらについては現在アミノ酸シークエンスを決定する準備を行っている。今後は有意に発現量に差のあった残りのクローンについても同様な解析を続けていく予定である。
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