研究課題/領域番号 |
17590220
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
木村 正司 香川大学, 医学部, 助教授 (30253264)
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研究分担者 |
大森 浩二 香川大学, 医学部, 助教授 (00263913)
西山 成 香川大学, 医学部, 教授 (10325334)
宮武 明 香川大学, 総合生命科学実験センター, 助教授 (80211598)
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キーワード | アンジオテンシン / アドレナリン作用薬 / 心肥大 / 酸化ストレス |
研究概要 |
研究の目的は、心不全時のAT1受容体及び異なる受容体との相互作用から生じる細胞内情報伝達機構を検討することである。本年度は、βアドレナリン受容体刺激(イソプロテレノール(ISO)投与)による急性、慢性心不全モデルでAT1受容体拮抗薬(ARB)の治療効果と検討し、次の結果を得た。 ISOを急性静脈内投与すると左室MAPキナーゼの内p38とJNKのリン酸化体量は、ARBを作用させない場合と比べおよそ半減した。一方で、Raf/MEK/ERK系の各因子のリン酸化はほとんどコントロールレベルにまで抑制された。ISOによる心拍数の増大あるいはCREBのリン酸化には、ARB処置の有無で差はないことから、これはβアドレナリン受容体の直接の抑制ではないであろう。またAT1受容体を介した反応であることは、AT1受容体欠失マウスにISOを投与した場合にもRaf/MEK/ERK系の反応性が欠如していることから分かった。ISOによって心筋Ras活性、Rap-1活性共に上昇し、ARB前処置でこのうちRas活性は有意に抑制されるが、Rap-1活性増強には影響を与えなかった。 C57BLマウスにISOを10日間持続投与し、ARBを併用投与すると、心肥大進行は有意に抑制され、心筋の活性酸素産生量、過酸化脂質量の正常化、コラーゲンの増成抑制が認められた。 AT1a受容体欠失マウスにISO持続投与をしても心肥大はほとんど進行せず、組織酸化ストレスの増大も認めなかった。従ってISOによる心肥大や心酸化ストレスの誘導には、AT1受容体が深く関わることが分かった。 以上により、ISO処置下でのARBによるRaf/MEK/ERK系の抑制機構にはAT1受容体を介したRas-Raf刺激経路の抑制の他、βアドレナリン受容体を介したRap-1の活性化によるRafキナーゼの直接の抑制機構も含まれると考えられる。このメカニズムが、ARBの心筋肥大あるいは心不全の進展抑制の効果に結びつく可能性が示唆された。
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