研究課題
(目的)血管平滑筋の受容体作動性Ca^<2+>チャネルの候補分子TRPC6の活性化には、Ca^<2+>/カルモジュリンキナーゼII(CAMKII)を介したリン酸化が必須である。本研究では、TRPC6上のCAMKIIリン酸化のコンセンサス配列RXX(S/T)におけるセリンあるいはトレオニン残基のアミノ酸変異体を作成し、この変異がTRPC6チャネル活性化過程に与える影響について検討した。(結果)野生型TRPC6及びそのCAMKIIリン酸化可能部位のアラニン置換体(T9A、S14A、S28A、T69A、T193A、S321A、T401A、T487A)をHEK293細胞に過剰発現し、fura-2イメージングによるBa^<2+>蛍光測定やパッチクランプ法による電流測定を行うと、いずれの場合もカルバコール(CCh;100μM)投与による受容体刺激に伴ったTRPC6チャネルの活性化が観察された。この活性化はTRPC6の第1細胞内ループ(II-IIIループ)のアラニン置換体T487Aでは著しく減少していた。一方、T487E置換体(固定した陰性電荷を持つ変異でリン酸基が付加された状態を模倣する)では、チャネルの活性化が著しく増強し、脱活性化は有意に遅延した。更に、TRPC6のC末端配列に対する抗体を用いた免疫蛍光法によって、それぞれの置換体の発現パターンを検討すると、いずれの場合も細胞膜に限局した分布には変化が見られなかった。同様の結果は、TRPC7のC末端部をTRPC6のそれと入れ換えたキメラ(T776)においてCAMKIIリン酸化可能部位のアラニン置換体(T16A、S267A、S347A、S433A)を作成し、発現した場合にも見られた。すなわち、TRPC6のT487に相当する部位を置換した変異体S433Aにおいてのみ、CChによるBa^<2+>蛍光の増加や電流の活性化の減弱が観察された。(結論)以上の結果から、TRPC6の活性化には、II-III loopにあるトレオニン残基のCAMKIIによるリン酸化が、本質的な役割を果たしていることが強く示唆された。今後は、このアミノ酸のリン酸化をin vitro実験で確認し、CAMKIIによるTRPC6チャネルの機能的制御を可能にする空間的構造基盤を明らかにする。
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Neurochemistry International (In press)
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