研究課題
基盤研究(C)
血管の受容体活性化Caチャネル分子TRPC6の活性化過程において、カルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)によるリン酸化が決定的な役割を果たしているという最近の我々独自の発見に基づき、その分子基盤を明らかにすることを目的として以下の実験を行い、その生理学的意義を探索した。野生型TRPC6及びそのCAMKIIリン酸化可能部位のアラニン置換体をHEK293細胞に過剰発現し、蛍光イメージングによる細胞内への2価イオン流入やパッチクランプ法による電流測定を行うと、いずれの場合もムスカリン受容体刺激に伴ったTRPC6チャネルの活性化が観察された。この活性化はTRPC6の細胞内II-IIIループのアラニン置換体T487Aで著しく減少した。一方、T487E置換体(固定した陰性電荷を持つ)では、チャネルの活性化が増強し脱活性化が遅延した。この時TRPC6蛋白質の免疫蛍光の細部膜に限局した分布パターンは、T487の置換によって変化しなかった。同様の結果は、TRPC7のC末端部をTRPC6のそれと入れ換えたキメラにおいても観察された。TRPC6のT487に相当する部位を置換した変異体S433Aにおいてのみ、ムスカリン受容体刺激への応答の減弱が観察された。以上の結果から、TRPC6の活性化には、II-III loopにあるトレオニン残基のCAMKIIによるリン酸化による荷電状態の変化が、活性化のゲーティング機構を強く修飾していることが示唆された。CaMKIIによるリン酸化可能部位T69はPKGによるそれと一致する。そこで、血管の生理的PKG活性化因子NOとその下流のシグナル伝達系の関与を調べた。NO供与体やcGMPアナログは強制発現したTRPC6電流やA7r5における受容体作動性電流を著明に抑制した。またこの効果は、PKGの選択的抑制ペプチドDT-3や有機阻害薬KT5823はで拮抗され、T69のアラニン置換によって消失した。以上より、TRPC6チャネルの活性は、CaMKIIやPKGによって動的な制御を受けていることが明らかとなった。
すべて 2007 2006 2005 2004
すべて 雑誌論文 (16件)
Journal of Pharmacological Sciences 103
ページ: 417-426
Pflugers Archiv Eur J Physiol. 453(4)
ページ: 455-462
ページ: 455-62
EMBO Journal 25(22)
ページ: 5305-5316
Nature Chemical Biology 2(11)
ページ: 596-607
Circulation Research 99
ページ: 119-131
Microcirculation 13(7)
ページ: 535-550
Neurochemistry International 48
ページ: 696-702
Journal of Biological Chemistry 280(18)
ページ: 18434-18441
Journal of Biological Chemistry 280(24)
ページ: 23041-23047
Current Pharmaceutical Design 11 (15)
ページ: 1899-1914
Journal of Physiology 561(2)
ページ: 415-432