(1)H9c2細胞で高脂血症薬フルバスタチンが心筋型Na^+/Ca^<2+>交換輸送体(NCX1)のmRNA量を減少させることを見出した。この機序は、フルバスタチンがHMG-CoA還元酵素を抑制し、メバロン酸代謝の下流でゲラニルゲラニル基を枯渇させるために、低分子量G蛋白質のうちRhoBの活性化が抑制され、NCX1のmRNA発現量が減少したためであることが示唆された。 (2)また、リゾフォスファチジルコリン(LPC)が、NCX1のmRNAと蛋白の発現量を増加させることを見出した。この機序は、LPCの作用が百日咳毒素やgeranylgeranyltransferase阻害薬で抑制されることから、LPCがGi/oを介して、geranylgeranyltransferaseを活性化させることに由来することが明らかになった。今後、この作用にRhoBが関与することを示す必要がある。 (3)活性酸素がNCX電流を増大させることが報告されていたが、その機序は不明であった。我々はモルモットの心室筋を用いて、H_2O_2がNCX1電流を増大することを見出した。この作用は、OHスカベンジャーであるエダラボンや、百目咳毒素、MEK阻害薬U0126で抑制されることからH_2O_2がOHに変換され、Gi/oとMAPキナーゼを活性化してNCX1を活性化することが示唆された。さらに、低濃度のH_2O_2のNCX1電流に対する作用は、PI3キナーゼ阻害薬のボルトマンニンや、Na^+/H^+交換輸送体阻害薬のカリポライドで抑制され、また、高濃度のH_2O_2の作用は、チロシンキナーゼの1つであるSrcキナーゼ阻害薬PP2で抑制された。即ち、低濃度H_2O_2はPI3キナーゼを活性化させ、Na^+/H^+交換輸送体を活性化させることにより、細胞内Na^+濃度を高め、pHをアルカリ化することにより、NCX1を活性化することが示唆された。また、高濃度のH_2O_2はSrcキナーゼを活性化させることにより、NCX1を活性化することが示唆された。しかし、NCXのチロシンリン酸化は検出できなかったので、H_2O_2は、チロシンキナーゼを活性化して間接的にNCX1の機能を高めている可能性があることが分かった。
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