研究概要 |
まず、マウスおよびラット膵ランゲルハンス氏島を単離し、発現しているTRP mRNAをRT-PCRにより解析した。その結果、いずれにおいても、TRPCl,V2,M4が高発現していることを確認した。 次に、マウス単離膵島を用いて、低浸透圧刺激により細胞膨張を誘発した際に活性化されるカチオンチャネルの性質を調べた。低浸透圧刺激によるインスリン分泌量の増大は、TRPVチャネル阻害薬ruthenium redにより顕著に抑制された。さらに、カチオンチャネル阻害薬Gd^<3+>、PKC阻害薬Ro31-8220、PLC阻害薬U73122もこの反応を有意に抑制した。以上の結果から、マウスβ細胞における細胞膨張によるインスリン分泌に伸展活性化カチオンチャネルが関与することが示唆され、その分子実体がTRPV2である可能性が推察された。また、PLCおよびPKCの活性化がこの反応に寄与していることが示唆された。 また、酸化ストレスにより誘発されるβ細胞アポトーシスに関わるカチオンチャネルの性質についても検討した。ラット由来β細胞株INS-1において、100μMという比較的低濃度のH_2O_2により誘導されるアポトーシスは、細胞内Ca^<2+>キレート剤であるBAPTA/AMや、IP_3作動性Ca^<2+>遊離チャネルおよびカチオンチャネルの阻害薬である2-APBにより、ほぼ完全に抑制された。すなわち、H_2O_2誘導アポトーシスに小胞体からのIP_3作動性Ca^<2+>遊離とカチオンチャネルを介したCa^<2+>流入の両方が関与することが示唆された。
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