活性酸素種産生酵素NADPH oxidaseは複数のサブユニットにより構成されるが、近年新規触媒サブユニットとしてNox1が同定され、血管組織の活性酸素種産生に寄与していることが明らかとなった。我々はNox1の発現がリボ多糖体(LPS)投与により誘導されることを見出した。LPSを腹腔内に投与すると大動脈におけるNox1の発現は投与32時間後に最高レベルに達する。歯周病などの慢性感染症は動脈硬化症の危険因子として知られることから、エンドトキシンによる本酵素の慢性的な活性化が動脈硬化性病変に寄与しているのではないかと考え、高脂血症モデルにて血管壁リモデリングにおけるNADPH oxidaseの役割を明らかにすることとした。 Nox1欠損マウスと動脈硬化の動物モデルであるapoE欠損マウスとを交配して作出したダブルノックアウトマウス(DKO)に30週普通食を摂取させた群、4〜24週間高脂肪食を摂取させた群、さらに高脂肪食摂取下500ng/kg/minアンギオテンシンIIの同時投与を行った群についてそれぞれ大動脈を摘出してOil red O染色標本を作成した。病変部の面積を各対照群と比較したところ、これらの群間には統計的に有意な差は認められず、動脈硬化の発症・進展におけるNox1の役割を明らかにすることは出来なかった。 一方、LPSの腹腔内投与によるNox1の発現を血管以外の組織でも検討したところ、投与後4時間で最高となる臓器もあることがわかった。今後LPS投与後の生存率を野生型マウスと比較し、Nox1のエンドトキシン血症における病態生理学的役割について解析を進める予定である。
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