研究概要 |
近年、ATPがP2XおよびP2Y受容体を介して、広汎な細胞機能の調節に関与していることが知られている。しかし今日まで、ATPの細胞外への放出のメカニズムやその細胞内Ca^<2+>シグナリングについてはほとんど不明のままである。従って、本課題研究では、これらの点を明らかにするために、次の2種類のテーマについて研究を行った。 最初は、培養T. coli細胞を用いた研究で、ブラディキニンによるATP放出機構の検討を行った。その結果、ブラディキニンはB2受容体を介したIns(1,4,5)P_3産生増加、とさらに小胞体からのCa^<2+>遊離、そのCa^<2+>シグナルを介して、最終的に膜トランスポーターMRP1を活性化してATPの膜輸送を促進することが明らかにされた。この時、CFTRトランスポーターやhemiチャネルの関与は認められなかった。 次いで行われた培養精管平滑筋細胞からのカフェインによるATP放出とその細胞内Ca^<2+>シグナリングの関係について検討がなされた。細胞内Ca^<2+>測定、RT-PCR実験などによる解析の結果、カフェインはRyR2受容体を介して小胞体からのCa^<2+>遊離を引き起こす。このCa^<2+>シグナルがミトコンドリア(mt)に伝達され、mt内のCa^<2+>上昇、次いでCa^<2+>依存性酵素群の活性化、それにより電子伝達系の亢進とATP合成の促進がもたらされる。最終的に、このシグナルにより膜のATP輸送機構が活性化されて、ATPの細胞外放出が引き起こされることが明らかにされた。
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