研究概要 |
1.我々が見出した血管新生調節因子puromycin insensitive leucyl-specific aminopeptidase (PILSAP)の血管形成における影響を見るため、マウス胚性幹(embryonic stem : ES)細胞株、MG1.19にアミノペプチダーゼ活性を欠くcDNAを導入して変異株(mtPILSAP)を作製し、3次元分化系において形成される胚葉体内(embryonic body : EB)の血管細胞分化や血管構築を検討した。PILSAPのアミノペプチダーゼ活性は、分化初期のFlk-1陽性前駆細胞の出現には関与しないが、Flk-1陽性の系列細胞(発生途中一過性に発現するもの含めて)の血球、血管内皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞への分化、並びにEBでの血管網の構築に必要である事が判明した。(Genes to Cells,11:719-729,2006) 2.上記1の機序を検討する目的で、培養8日目のmtPILSAP-EBならびにMock-EBの核蛋白をプロテオーム解析したところ、前者において発現が有意に抑制された蛋白が幾つか検出され、そのうちの一つの核蛋白は、血管内皮細胞においてPILSAPと結合する事、その結合は血管新生促進因子VEGFで増強する事が判明した。現在、両者の結合がどのような作用をもたらすのか検討中である。 3.我々が発見した血管新生調節因子vasohibin-1,vasohibin-2の血管形成における役割を分析するため、上記ES細胞の3次元分化培養系においてvasohibin-1,vasohibin-2の発現の時間経過を解析した。この発現パターンを元に、発現の時期に合わせてこれら遺伝子の発現を一時的に抑制して、その血管形成における作用を検討する。この目的のためにMG1.19にvasohibin-1 shRNAあるいはvasohibin-2 shRNA発現ベクターと、テトラサイクリンリプレッサー発現ベクターを共発現させた細胞株を作製中である。
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