研究概要 |
1.我々が発見した血管新生調節因子puromycin insensitive leucyl-specific aminopeptidase(PILSAP)はマウス胚性幹(embryonic stem:ES)細胞の3次元分化系において、そのアミノペプチダーゼ活性が、血管新生増殖因子(VEGF)の2型受容体VEGFR2陽性前駆細胞から、系列の血球、血管内皮細胞(endothelial cell:EC)、平滑筋細胞、骨格筋細胞への分化・増殖、並びに胚様体(embrioid body:EB)内での血管網の構築に必要である事が判明した。 2.アミノペプチダーゼ活性が抑制されたmtPILSAP-EBならびにMock-EBの核蛋白のプロテオーム解析より、前者において発現が有意に抑制されていた蛋白群にpigpenを見出した。Pigpenは、胎児期のangioblast(血管芽細胞)や、増殖期、腫瘍のECの核に強く発現することが報告されている核内封入体cajal/coild body蛋白質の1つである。しかし、この蛋白に関する論文は現在までわずか22報で、その働きに関しては不明な点が多い。Pigpenは、我々が検討したマウスEC株(MS1,MSS31)でも核に発現し、VEGF刺激により発現が促進される。Pigpenの発現をsiRNAにより抑制すると、PILSAP発現抑制の場合と同様にEC、平滑筋ならびに骨格筋細胞への分化が抑制された。さらに、細胞質蛋白であるPILSAPがVEGF刺激により核に移動して、pigpenと結合する事が判明した。また、mtPILSAP-EBでは、核におけるPILSAPとpigpenの結合が有意に抑制されており、VEGFR2陽性細胞の分化・増殖、並びにEBでの血管網の構築に、このpigpenがPILSAPと協同して何らかの役割を果たしている事が強く示唆された。
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