研究概要 |
酸化ストレス応答におけるNrf2-Keap1システムによる制御機構として,下記点について明らかにした. 1)酸化ストレスによる転写因子Nrf2の活性化機構は,Keap1からのNrf2の解離ではなく,Keap1によるNrf2のユビキチン化の阻害によるNrf2の安定化によりもたらされることを明らかにした. 2)Keap1-Nrf2による酸化ストレス防御機構の破綻とヒト疾患の相関を調べる目的で,Keap1遺伝子の変異を検索したところ,アミノ酸置換をもたらす遺伝子変異を同定した. 3)2)で同定した遺伝子変異のKeap1の機能への影響を調べたところ,Nrf2抑性能を著しく欠如していることを明らかにした.このことは,ヒト肺ガンにおいて,酸化ストレス応答が恒常的活性化していることを意味する. 4)Keap1によるNrf2認識機構を理解するために,Keap1のDGRドメインとNrf2のNeh2ドメイン内の部分ペプチドからなる複合体のX線結晶構造解析に成功した. 5)4)のデータから,2)で見出したアミノ酸置換は,DGRドメインの構造変換をもたらしNrf2結合能を減弱させる可能性が高いことを見出した. 6)Nrf2のNeh2ドメインのN末端に存在するDLGモチーフも,Keap1に結合することを明らかにし,Keap1 2分子によるNrf2の結合モデルを提唱した.
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