本研究計画の目的は、我々が同定したp27^<Kip1>の新規結合因子p27NBP1のp27^<Kip1>の細胞内レベルの制御における役割を明らかにすることである。17年度においては、p27NBP1がp27^<Kip1>のユビキチンリガーゼであり、p27^<Kip1>のプロテアソームによる分解を亢進させることにより、細胞周期の進行を制御していることを明らかにした。本年度はさらに詳細な検討を行い、以下に記す研究成果を得た。 1.p27NBP活性の細胞周期への影響 (1)T98細胞のp27NBP1をノックダウンした後に血清飢餓によりG0期に同調した。そして血清添加後の細胞周期再開をフローサイトメトリー解析で調べた。するとp27NBP1ノックダウン細胞ではコントロール細胞に比べてG0/G1で停止した細胞の割合が増加していた。 (2)対数増殖期のHeLa細胞ではp27NBP1ノックダウンで見られるG1/S比の上昇が、p27^<Kip1>とp27NBP1のダブルノックダウンによって抑えられた。したがって1-(1)の結果はp27NBP1ノックダウンによってp27^<Kip1>の蓄積したため細胞周期進行が抑制されたことを示すと言える。 2.p27^<Kip1>の他のユビキチンリガーゼとの比較 (1)その他のp27^<Kip1>のユビキチンリガーゼとして知られるSkp2やKPC1をノックダウンして1-(1)と同様の実験を行った。細胞周期進行においてSkp2やKPC1よりもp27NBP1ノックダウンのほうが強い抑制効果を示した。 (2)Skp2ノックアウトMEFのp27NBP1をノックダウンした。この細胞でもp27^<Kip1>の蓄積が顕著であった。したがってSkp2とp27NBP1は独立してp27^<Kip1>の安定性を制御していると考えられた。 3.p27NBP1発現量に対するDNAアルキル化剤の影響 DNAアルキル化剤の処理によってp27NBP1のユビキチン化が亢進し、その発現量が低下することが分かった。
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