研究課題
神経細胞は、神経細胞内に軸索と樹状突起という構造的、機能的に異なる特殊化した2つの膜ドメインをもつことによって、細胞内を伝達するシグナルの流れに方向性を生じさせている。神経細胞は細胞体から1本の軸索と複数の樹状突起を伸長させる。軸索・樹状突起とも最初は区別のつかない未成熟な神経突起から形成されていくが、どうして複数ある突起のうち1本のみが選択され急速に伸長し、軸索となるのかについては、未だ不明である。そのひとつのメカニズムとして、小胞輸送により膜成分が軸索の先導端へ選択的に多く運ばれて、そこで膜が融合し、さらにそこでのアクチン細胞骨格の再編成により、軸索が形成されると考えられている。本年度の研究では、この軸索形成の分子メカニズムについて、アクチン細胞骨格の再編成に重要な働きをするRho低分子量Gタンパク質の制御タンパク質であるRA-RhoGAPとリン脂質との結合に焦点をあてて解析し、以下の結果を得た。1)RA-RhoGAPのPHドメインにホスファチジン酸が結合した。2)RA-RhoGAPにホスファチジン酸が結合することにより、そのRhoGAP活性が上昇した。3)RA-RhoGAPの神経突起の成長円錐への局在にホスファチジン酸との結合が関与していた。4)ホスファチジン酸を産生するホスホリパーゼD2とRA-RhoGAPを共発現させると、ホスホリパーゼD2単独の時よりも神経突起の数が増加した。5)RNAiによるRA-RhoGAPの発現抑制が、ホスホリパーゼD2による神経突起形成を抑制した。このように本年度は、RA-RhoGAPによる神経軸索形成の制御機構について、当初の計画以上の成果をあげることが出来た。
すべて 2006 その他
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