研究概要 |
カンナビノイド受容体の内因性リガンド(エンドカンナビノイド)として見出されたアナンダミド(N-アラキドノイルエタノールアミン)は動物組織中で生体膜のグリセロリン脂質から2段階の酵素反応で合成されるが、長い間関与する酵素の実体は不明であり、アナンダミドの生成を分子生物学的手法で研究することは困難であった。最近我々は、前駆体のN-アシルホスファチジルエタノールアミン(NAPE)からアナンダミドを生成する新規ホスホリパーゼD型酵素(NAPE-PLD)の哺乳動物からのcDNAクローニングと発現に世界で初めて成功した(Okamoto et al., J.Biol.Chem. 279, 5298-305, 2004)。本研究課題においては、主としてラットNAPE-PLDの繊え体の詳細な性状解析を行なった。組換え体を得るため、同酵素とグルタチオンS-トランスフェラーゼの融合タンパク質を分子シャペロンと同時に大腸菌で発現させた。発現した酵素をCHAPSで可溶化後、グルタチオン親和性クロマトグラフィー等で精製し、ほぼ均一な標品を得た。精製酵素の基質特異性を詳細に検討したところ、種々の長さのN-アシル基を持つNAPEについては、N-アシル基の炭素数が4〜20の範囲で高い反応性を示したが、炭素数が1〜2では反応性は低下した。一方、生体膜に豊富なグリセロリン脂質(PC、PE、PS、PI)とはほとんど反応しなかった。また、精製酵素はミリモル濃度のCa、Mg等の二価陽イオンで強く活性化された。原子吸光法により触媒活性に関わるZnを含有することが判明した。さらに、部位特異的変異法により、NAPE-PLDが属するメタロ-β-ラクタマーゼ・ファミリー内で高度に保存されているD147、H185、H187、D189、H190、H253、D284、H321が、触媒活性に不可欠であることが示された。
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