研究課題/領域番号 |
17590252
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
竹重 公一朗 九州大学, 医学研究院, 教授 (10037450)
|
研究分担者 |
牟田 達史 九州大学, 医学研究院, 助教授 (60222337)
大場 誠介 九州大学, 医学研究院, 特任助手 (80380666)
|
キーワード | 自然免疫 / IκB-ζ / 転写制御 / mRNA安定化 / シグナル伝達 |
研究概要 |
我々は、自然免疫系の制御に関わる遺伝子を検索し、アンキリンリピートをもつ新規核タンパク質を同定し、IκB-ζと命名した。IκB-ζは、非刺激の細胞ではほとんど検出されないが、グラム陰性菌表層のエンドトキシン成分であるリポ多糖(LPS)やその他のToll-like receptorを刺激する様々な微生物成分によって、マクロファージや繊維芽細胞において強く誘導される。興味深いことに、この発現誘導はインターロイキン(IL)-1βによっても誘導されるが、LPSやIL-1βと同様に、NF-κBやMAP kinaseの活性化を惹起する炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF)-αによって誘導されない。誘導されたIκB-ζは、核内で、炎症応答の転写反応において中心的な役割を果たすNF-κBのp50サブユニットと結合する。 今回、強制発現実験により、IκB-ζは、エンドトキシン刺激に伴うIL-6など一群の炎症性遺伝子の発現に必須である一方、TNF-αなどの遺伝子発現を負に制御していることを明らかにした。さらに、IκB-ζ自身の発現誘導を解析した結果、この発現誘導には、NF-κBの活性化による転写活性化が必要であるが十分でなく、TLR/IL-1 receptor特異的なmRNAレベルでの発現制御が必須の役割を果たしていることも明らかにした。 IκB-ζは遺伝子特異的にNF-κB依存性の転写反応を正と負、双方向へ制御していることから、この分子の発現誘導は、炎症反応における選択的な遺伝子発現に大きく影響する。従って、自然免疫系の活性化においては、新たな転写を必要とせず、刺激に伴い速やかに活性化されるNF-κBを主要な転写因子として用いつつ、転写後調節によって刺激特異的に誘導されるIκB-ζなどの制御因子によって、その転写活性を遺伝子特異的に正と負の双方向い制御していることが明らかになった。こうした多段階の転写制御機構が、刺激に応じた適切な遺伝子の選択的発現を誘導していると考えらえる。
|