マクロファージをリポ多糖で刺激した際に誘導される分子IκB-ζの転写制御機構および刺激特異的誘導機構について研究した。 1.転写制御機構 他のタンパク質と相同性を示さないIκB-ζのN端末側領域の機能について検討したところ、まず、この領域内に核移行シグナルが存在することが明らかとなった。さらに、各種IκB-ζ断片をGAL4のDNA結合ドメインとの融合タンパク質としてHEK293細胞に発現させ、その転写活性化能をGAL4レポーターを用いて測定することにより、転写活性化活性について検討した結果、IκB-ζ分子内部断片に活性が検出された。このIκB-ζの転写活性化活性発現機構について検討したところ、転写活性をもたないNF-κBp50サブユニットのGAL4融合タンパク質を、全長のIκB-ζと共発現した際に、転写活性が検出されるようになることを見出した。従って、IκB-ζの転写活性化能は、NF-κBとの結合を介した構造変換によって発揮されると考えられた。またIκB-ζは転写を正と負の双方向に制御する二面性をもつ転写制御因子であることが明らかとなり、この双方向の制御は、NF-κB結合配列とC/EBP結合配列およびそこに結合する因子の有無が重要であることが明らかとなった。 2.刺激特異的誘導機構 IκB-ζは、Toll-Like receptor刺激物質やIL-1βによる刺激によって強く発現誘導されるが、TNF-αによっては誘導されない。IκB-ζのプロモーター解析やnuclear run-on assayにより、いずれの刺激でもIκB-ζ転写活性の増強がみられるが刺激特異性はみられなかった。一方、LPSやIL-1β刺激特異的に、IκB-ζ mRNAの分解速度が低下し、安定性が著しく上昇することがわかった。この刺激特異的安定化を決定するIκB-ζ mRNA中のシスエレメントを同定したところ、3'-非翻訳領域の165-bpフラグメントにあることが明らかとなった。
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