研究概要 |
これまでの研究よりチェックポイント蛋白質複合体9-1-1複合体(Rad1,Rad9,Hus1)は,細胞周期、特にS期およびG2/M期チェックポイントにおけるダメージセンサーと考えられている.9-1-1複合体のDNAダメージ依存的なリン酸化やPCNAとの構造的な類似性、またチェックポイント機構の大まかなシグナル伝達経路については報告されてきている.しかしながら,1)Rad1,Rad9,Hus1それぞれの本質的かつ固有な機能は何であるのか.2)なぜ9-1-1複合体がPCNAのようにホモ三量体ではなくヘテロ三量体でなくてはならないのか.3)9-1-1複合体のどのような働きがダメージセンサーの本態をなすのか.4)9-1-1複合体がDNA修復系や複製系、また細胞死とどの様に関わっているのかなどの点については明らかにされていない.そこで、本研究ではマウスembryonic carcinoma細胞株F9細胞を用いた遺伝子ターゲッティングにより,Rad1,Rad9,Hus1遺伝子のコンディショナルノックアウト細胞を樹立,及びRad1,Rad9,Hus1それぞれの遺伝子への変異の導入もしくは9-1-1分子間のドメインの入れ替えによる変異遺伝子のノックインにより、9-1-1蛋白質の固有な機能について明らかにすることを目的としている.現在までにRad1遺伝子についてはコンディショナルノックアウト細胞株の樹立はすでにおえており,現在,ヌクレアーゼ活性中心と考えられる部位について,点変異の作製,組換え蛋白質による試験管内反応系の確立,変異遺伝子のノックアウト細胞へのノックインとチェックポイント機構への関係について研究を進めている.Rad9についてはある種のDNA傷害剤依存的にユビキチン化される実験結果を得ており,どのリシン残基を解して,ユビキチン化するのか,ユビキチン化とチェックポイント機構の発動,シグナル伝達にどのように関係しているのかについて解析している.Hus1についてもコンディショナルノックアウト細胞の樹立はすでに完了している.今後,Rad1,Rad9についてはさらに解析を進めるとともに,Hus1についてもユビキチン化,SUMO化について検討する.
|