TRPV4(Transient receptor potential vanilloid 4)は、細胞での物理的刺激感知に関わるカルシウム透過性チャネルの一つで、骨の圧力感知に重要な役割を果たす可能性がある。予備検討で、軟骨細胞でのTRPV4の機能的発現が示唆されたことから、軟骨細胞が関与する骨の成長、さらには骨折後の修復過程にもTRPV4は機能している可能性がある。そこで、骨組織の何処で、成長のどの時期に、どのような物理的刺激を感受して機能するか、さらには実験的骨折後の治癒過程におけるTRPV4の関与について、TRPV4欠損マウス(TRPV4-/-)を用いて検討を開始した。 研究進捗状況 1)TRPV4発現の時系列での解析:組織化学的・電気生理学的解析により、成長初期の成長板軟骨において、一部の増殖期・肥大化初期の軟骨細胞にTRPV4が発現していること、TRPV4-/-由来初代培養軟骨細胞では、低浸透圧での反応が欠如していることが明らかとなった。 2)TRPV4-/-の骨評価:μCT撮影による、TRPV4-/-と野生型(C57BL/6J系)の骨梁の形態比較を委託外注して解析を開始した。少なくとも両者に構造上大きな差異はなさそうであるが、さらに細部について検討を進めている。 3)骨折修復モデル予備実験:目的に適した骨折モデル実験として、東大整形外科(川口浩助教授のチーム)が報告したマウス脛骨切断術を選択し、直接指導により技術を導入した。既に実験を一部開始しているが、予備検討では、TRPV4-/-の骨折後の修復は対照マウスよりも遅延している可能性があることが組織学的解析の結果判明した。今後、例数を追加し、経時的・空間的に詳細な解析を実施する計画である。 4)上記の結果を含め、現在論文を作成中である。
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