【目的】熱・酸・浸透圧など物理刺激で活性化するCa^<2+>透過性チャネルTRPV4 (Transient receptor potential vanilloid 4)の骨における生理機能を知る目的で、TRPV4欠損マウス(TRPV4-/-)の骨での表現型について、特に軟骨細胞を中心に、組織学的・電気生理学的・分子生物学的に解析した。 【結果】1)RTPCRと免疫蛍光染色:TRPV4は軟骨細胞での発現が確認された。2)パッチクランプによる電気生理学的解析:正常マウス由来初代培養軟骨細胞では低浸透圧下で検出されるGdCl_3で阻害される電流が、TRPV4-/-由来細胞では全く検出されなかった。3)組織学的検討:TRPV4-/-の成長板軟骨細胞の分化過程には軽度ながら正常マウスでは見られない異常が散見された。4)骨折修復実験:マウス脛骨切断を施術し治癒過程を比較したが、軟骨細胞の分布や仮骨形成の速度には顕著な差は認められなかった。5)初代培養軟骨細胞での比較:リアルタイムPCRでの遺伝子発現解析では、Collagenの発現パターンが正常とは異なっている可能性が見出された。 【結論】本研究課題での結果からJRPV4は、軟骨細胞において、低浸透圧に応答するチャネルとして機能発現しているが、その役割は骨成長や骨折治癒で必須ではなく、外部の刺激、おそらく浸透圧感知の微調整に働いていることが示唆される。チャネル活性化機構と下流の分化調節因子へのシグナル伝達についてはさらに詳細な検討が必要である。
|