平成18年度の研究は主にdbpC/Contrinの発現解析とdbpB/YB-1ノックアウトマウスの解析を中心に行った。具体的には、 1.dbpC/Contrinに対する抗体を作製して正常組織およびがんでの発現を免疫組織染色で検討した。その結果、dbpC/Contrinはヒト精巣腫瘍、ヒト卵巣未分化胚細胞腫および数種類のがんで高発現していた。また、正常組織では生殖細胞や胎盤トロボブラストに発現が限局していた。以上の結果から、dbpC/ContrinがCancer/Testis Antigenになる可能性が示唆された。 2.精巣腫瘍におけるdbpC/Contrinの発現と細胞の局在を検討した。その結果、転写調節領域の-272から-253は細胞特異的な発現に重要な領域であった。この領域にはE-boxが存在し、精巣腫瘍ではE-boxに結合するN-Mycが高発現していた。また、精巣腫瘍ではdbpC/Contrinは細胞質に限局しており、C末端を欠失すると核に移行することからC末端に細胞局在を制御する領域がある可能性が示唆された。 3.dbpB/YB-1^<-/->ノックアウトマウスは胎生致死であり、胎児は脳ヘルニアを呈していた。マウス胚性線維芽細胞を用いて解析した結果、βアクチンの発現減少とFアクチンの形成減少が観察され細胞形態とアクチン重合に異常を認めた。これらが脳ヘルニアを起こす神経管欠失の原因であると考えられた。また、dbpB/YB-1^<-/->ノックアウトマウス胚性線維芽細胞の細胞増殖能は低下していた。以上の結果から、dbpB/YB-1はマウス胎児の発育初期に重要な分子であることが示唆された。
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