研究概要 |
最終年度ではYB-1の生物学的特性と発現制御を明らかにするとともに,YB-1の機能制御を明らかにした。 1.YB-1はシスプラチン耐性細胞で発現が亢進しているがYB-1の発現制御解析の結果から,シスプラチン耐性細胞で発現が亢進している転写因子TwistがYB-1のプロモーターに存在するEボックスを介して発現を促進することを見出した。さらに,siRNAを用いてYB-1あるいはTwistの発現を抑制すると,がん細胞の増殖が著しく減少することを見出した。これらの成果から,Twistによるがん細胞の増殖制御にはYB-1が関与することが示唆され,TwistおよびYB-1はがんの分子標的になりえると考えられた。 2.卵巣がんにYB-1 siRNAを処理してマイクロアレイ解析を行った結果,MDR1,thymidylatesynthetase,S100 calcium binding protein,cyclin Bを含む344遺伝子に発現の上昇を認め,CXCR4,N-myc downstream regulated gene 1,E-cadherin,phospholipase Cを含む534遺伝子に発現の低下を認めた。また,YB-1の細胞質から核内への移行はAkt siRNAあるいはintegrin-linked kinase(ILK)siRNAによって抑制された。さらに,Akt 阻害剤はマウスに移植されたがん細胞においてもYB-1 の細胞質から核内への移行を抑制した。これらの成果から,がんの分子標的になりえるYB-1 の核内移行において Akt経路がその標的になる可能性が示唆された。
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