研究課題/領域番号 |
17590258
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
神奈木 玲児 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 部長 (80161389)
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研究分担者 |
田口 修 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 室長 (00142167)
京ケ島 守 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 主任研究員 (50225091)
金森 審子 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 主任研究員 (00261173)
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キーワード | 低酸素誘導因子 / 転写調節 / シアル酸 / 糖トランスポーター / シアル酸転移酵素 / 遺伝子導入 / 細胞接着糖鎖 / ガングリオシド |
研究概要 |
最近我々は低酸素(hypoxia)によって細胞接着が強く促進されることを見いだした。本研究では細胞接着は多くの疾患の病態生理に深く関連している。このため本研究では低酸素による細胞接着の誘導機構の解明を目的とした。低酸素および正常酸素下での遺伝子発現の変化を検索したところ、これまでに低酸素によってFUT7、ST3O、UGT1、ITGA5およびSDC4遺伝子の転写が誘導されることを観察している。本研究によって、さらにシアル酸転移酵素ST3O以外のシアル酸転移酵素遺伝子の発現も誘導されることが判明した。また、低酸素によるシアル酸輸送体(トランスポーター)、SIALIN遺伝子の発現誘導が起こることも判明した。これにより、細胞表層のシアル酸含有糖鎖の発現が亢進し、場合によっては正常時には見られなかったシアル酸含有糖鎖が低酸素によって新たに出現することが明らかとなった。その影響はシアル酸を含有する糖蛋白質糖鎖のみならず、ガングリオシドなど糖脂質にも及んでいることが判明した。細胞へのシアル酸輸送体遺伝子の強制導入・発現により、低酸素の作用とほぼ同等の効果が観察された。従来、細胞内のシアル酸含有糖鎖の合成に必要なシアル酸の供給は、主としてde novoの生合成によると考えられてきたが、今回の結果は、特定の組織・器官によっては、低酸素状態では特にde novoの生合成のみならず、シアル酸輸送体の活性の変化が、シアル酸含有糖鎖の合成発現に大きな影響を与えることが明らかとなった。シアル酸含有糖鎖はセレクチンを介した細胞接着において特異的リガンドとして機能するのみならず、シグレックなどのシアル酸認識蛋白質のリガンドともなっており、シグレックを通して免疫抑制作用をもつ。このため、低酸素時のSIALIN遺伝子の発現誘導によるシアル酸含有糖鎖の変化は生理的に重要な意義を持つと考えられた。
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