WFS1遺伝子欠損インスリノーマ細胞株の解析;WFS1欠損β細胞株のインスリン分泌を解析すると、グルコースによるインスリン分泌の低下を認めた。また、WFS1欠損β細胞株に正常WFS1蛋白を発現させたところインスリン分泌の回復を認めたが、ウオルフラム症候群患者に見つかった変異を有するWFS1蛋白を発現させた場合には、ほとんど変化を認めなかった。 WFS1蛋白の細胞内カルシウム制御における役割の解析:WFS1蛋白を過剰発現するHEK293細胞およびshRNAにより発現を抑制させたWFS1ノックダウンHEK293細胞において小胞体カルシウム動態を小胞体に局在するキメラエクオリンを用い解析した。過剰発現細胞では小胞体カルシウムの増加が認められ、発現抑制細胞では低下が認められた。この結果より、WFS1蛋白が小胞体カルシウム動態制御に重要な役割を担っていることが明らかとなった。 小胞体ストレスによる膵島萎縮の分子機構:WFS1欠損膵島において翻訳抑制因子4E-BP1の発現増加が認められた。小胞体ストレス誘導剤タプシガルギンを添加した培地で培養した単離膵島や膵β細胞株MIN6でも4E-BP1の発現増加は認められ、小胞体ストレスに対する応答であることが明らかになった。さらに、小胞体ストレスによる4E-BP1の発現誘導は、転写因子ATF4による転写活性化に基づくことを明らかにした。4E-BP1の発現誘導の個体における意義を解明するため、4E-BP1欠損マウスをWFS1欠損マウスと交配し、WFS1と4E-BP1との2重欠損マウスを作製した。WFS1:4E-BP12重欠損マウスでは、膵β細胞の減少と血糖コントロールの増悪が認められ、4E-BP1の発現増加が小胞体ストレスによるアポトーシスからβ細胞を守る役割を果たしていることが明らかとなった。
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