研究概要 |
インスリン受容体はインスリン結合部位であるαサブユニットとチロシンキナーゼドメインを持つβサブユニットからなり、S-S結合でα_2β_2となり、1つのレセプターを形成する。いくつかのホルモン受容体の細胞外ドメインが血清中に遊離し存在することが報告されている。しかしヒト血清中におけるインスリン受容体αサブユニットの存在と定量法およびその病態との関連に関しては報告はない。以上の背景の上に"ヒト血清中には微量の遊離インスリン受容体αサブユニットが存在し、その量がある種の疾患と関連する可能性がある。"と申請者らは仮説をたてた。 そこで血清中遊離インスリン受容体αサブユニットを定量するELISA系をMBL社と共同で確立した。1,2型糖尿病患者において、血糖値に関連して血中IRα値が上昇していることを見出した(論文投稿中)。インスリン受容体αサブユニットはインスリンと結合するので、血中の実質的なインスリン濃度を下げ、血中グルコース濃度が高くなる(高血糖)(BBRC,2003,Kanezaki, Obata et al.)。従って、血中遊離インスリン受容体αサブユニットの増加は、糖尿病発症の増悪因子となる可能性がある。何らかの引き金で細胞表面上で活性化されたプロテアーゼによりレセプターが切断され、αサブユニットが遊離し、血中に放出されている可能性がある。今後、その分子メカニズムを明らかにすると、糖尿病発症予防薬の発見に結びつく可能性がある。なぜ糖尿病患者の血中αサブユニット値が増加するのか、その引き金は何か、どのようなタンパク分解酵素が関与しているのかその分子メカニズムを明らかにしていきたい。
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