研究概要 |
ABCトランスポーターであるMRP1のグルタチオン(GSH)依存的、非依存的な基質輸送機構の詳細について検討して以下の結果をえた。 1.MRP1はGSH依存的に抗がん剤を含む、多くの基質を輸送することが明らかになっているが、GSHの直接のMRP1にたいする作用は明らかではない。 MRP1発現膜小胞をトリプシン消化後にC末端部分を認識する抗体でイムノブロットするとC末端の細胞質内部分から切断されて35kDaのバンドが出現する。GSHの存在下ではこの35kDaのバンドの出現が抑制を受けること、また、このバンドの減少にはL_0部分が必要であることを見出した。このことからGSHがL_0に依存してMRP1のC末端の立体構造に変化を及ぼしている可能性を示した。 2.一方、MRP1がGSH非依存的に輸送する基質についてもいくつか報告されてきた。しかし、その輸送機構の詳細、GSH依存的輸送との違いについて明らかではなかった。 MRP1発現膜小胞を用いた取り込みの実験ではL_0の変異体dmL_0MRP1の発現膜小胞は、LTC_4,E2-17βグルクロン酸抱合体を輸送できなかったが、GSH非存在下でSN-38を野生型と同程度に輸送することができた。このことからSN-38のGSH非依存的輸送はGSH依存的輸送とは異なる基質認識を行っている可能性を示した。また、MRP1の基質を化学構造に基づきクラスタリングを行ったとき、6個のクラスターに分類され、GSH非依存的に輸送されていると報告されている分子はクラスターの5,6に、GSH依存的に輸送することが判明している基質はクラスター2,4に分類され、MRP1の基質認識を違いを化学構造から予測できる可能性をしめした。
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