MRP1の2つのNBD(nucleotide binding domain)のN末側に位置する、5番目と7番目の細胞室内部分(ICL5、ICL7)に共通して、グルタミン酸(507番目、1157番目)とグリシン(511番目と1161番目)が保存されていることを見出した。この配列をロイシンとプロリンに変異させたICL5とICL7の変異体とも、LTC4の輸送活性をがなく、さらにazidoAG-Aでの光親和性標識のGSH依存的な増強が消失していた。 さらに変異体MRPのATP反応性を調べた、ICL5変異体はNBD1のATP結合性は保たれていたが、NBD2の結合性は消失していた。ICL7変異体では両方のNBDの結合性が消失していた。また、バナデートトラップ法によるNBDのATPase活性ではいずれの変異体でも両方のNBDとも活性を消失していることが分かった。 これらの結果はICL5、ICL7のこれらの部位がMRP1のGSHの認識、ATPの結合性、ATPase活性に関連していることを強く示唆している。さらに変異体を作成して、詳細な解析を行う予定である。 今回、さらに我々はゴルジ膜状にある銅の輸送体蛋白質であるATP7Aが多くの抗癌剤耐性と関連すること、ヒト大腸癌の症例で免疫組織学的にATP7Aの発現がある症例ではCPT-11に対する耐性と相関していることを見出した。 蛍光を持つDoxorubicinを用いてその局在を調べるとDoxはCHO細胞では主に核に見られたが、ATP7A高発現のCHO細胞ではDoxはゴルジに点状に観察された。また、ATP7A高発現のCHO細胞由来の膜小胞のSN-38の取り込みは上昇していた。これらの結果からATP7Aがこれらの抗癌剤をゴルジ腔内へ取り込んで、トランスゴルジネットワークを介して排出することで、抗癌剤耐性に働いていることが示唆された。現在その薬剤輸送機構についてさらに詳細な解析を続けている。
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