研究課題
がん細胞の転移・浸潤は、細胞接着と細胞運動が協調的に作動することで起こると考えられており、細胞接着と細胞運動の分子メカニズムを解明することは、医学生物学的に重要な課題となっている。一方、最近、細胞内小胞輸送に関与しているシンタキシンが、細胞接着や細胞運動を制御している可能性が高くなっている。そこで、本年度は、細胞接着や細胞運動におけるシンタキシンの役割を明らかにする目的で、私共が見出した新規シンタキシン結合蛋白質であるTaxilinファミリーの機能の解明を進め、新たなα-Taxilin結合蛋白質としてαNACを見出した。αNACは、α-Taxilinに容量依存性に飽和結合し、Kdは約20nMであった。α-Taxilinにおける(αNAC結合領域は、C末端のコイルド-コイル領域であった。αNACは、単独で核内に移行してc-Jun依存性の転写を制御すると考えられているが、α-TaxilinはαNACの核への局在を抑制した。また、α-Taxilin以外のTaxilinファミリーメンバーも、αNACとの結合を介してαNACの核への局在を抑制した。一方、αNACは、βNACと複合体を形成して翻訳過程にあるmRNAの細胞内局在を制御していると考えられているが、α-Taxilinは、αNACを介してこのαNAC-βNAC複合体に結合した。以上のことから、本年度の研究により、TaxilinファミリーがαNACとの結合を介してαNACによるc-Jun依存性の転写を制御すると共に、翻訳過程にあるmRNAの細胞内局在をも制御している可能性が明らかになった。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Genes Cells 10
ページ: 465-476
Mol.Cell Biol. 25
ページ: 9920-9935