研究課題
基盤研究(C)
近年の医学・医療の進歩により、PETなどの新たな診断技術が開発されて早期発見される限局性のがんが増加し、がん治癒率が飛躍的に向上している。しかし、このような状況下において、浸潤・転移したがん細胞に対する治療法の開発は遅々として進まず、さらなるがん治癒率の向上を困難ならしめている。従って、がん細胞の浸潤・転移の分子メカニズムを解明して新たながんの治療法を開発することが、高齢化社会を迎える日本においては特に重要な課題となっている。一方、がん細胞の浸潤・転移は、基本的には細胞接着と細胞運動が協調的に作動することで起こると考えられており、これらの細胞機能の分子メカニズムを解明することが、がん細胞の浸潤・転移の分子メカニズムの解明につながると考えられている。そこで、本研究では、細胞運動の運動先進部に局在するシンタキシン-4の新たな結合蛋白分子であるTaxilinファミリーに着目し、がん細胞におけるTaxilinファミリーの機能と作用機構の解明を行い、以下の研究成果を得た。市販のヒトがん組織サンプルを用いて種々のがん組織におけるα-Taxilinの発現様式を免疫組織染色法にて検討したところ、α-Taxilinは大腸のneuroendocrine細胞以外ヒト正常組織においてほとんど発現していなかった。しかし、星状細胞腫や大腸がん、乳がんなどの種々のがん組織においてα-Taxilinの染色性の亢進を認めた。このことから、少なくともα-Taxilinが細胞のがん化と何らかの関連がある可能性が出てきた(投稿準備中)。また、α-Taxilinが、核内移行してc-Jun依存性の転写を制御するαNACに細胞質中で結合し、αNACの核内移行を抑制することが明らかになった。このことから、α-Taxilinが転写制御を介して細胞のがん化と何らかの関連がある可能性が出てきた。このように、本研究は予想以上に進展し、当初の目的はほぼ達成することができた。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
Genes Cells 10
ページ: 465-476
Mol. Cell Biol. 25
ページ: 9920-9935
Genes to Cells 10
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