研究課題
統合失調症の発症要因には遺伝要因が大きく関与しているが、一卵性双生児であっても発症の一致率は50%であり、遺伝要因のみでは発症は決定されず、環境あるいは偶然による要因も関与している。発現調節はゲノムの変異にも影響されるがその他に遺伝子ゲノムのメチル化機構によるものがある。本研究は統合失調症患者およびコントロールの死後脳のDNAを材料にメチル化の違いをスクリーニングして、統合失調症に関連するDNAのメチル化部位をスクリーニングし、統合失調症の発症に脳のDNAのメチル化が関与しているか否か、関与している場合はその遺伝子を同定することを目指している。死後脳のDNAをメチル化結合タンパク質のカラムを通過させることによりメチル化しているDNA領域を濃縮した。さらにその中から遺伝子領域にあるDNA領域をDNAチップでスクリーニングし、30の遺伝子が同定された。そのうちの一つの遺伝子では遺伝子エクソン内のCpGアイランドにあり、メチル化の違いが患者と死後脳の間で見られることをクローニング法により確認した。また、メチル化に応じて遺伝子の発現が落ちており、コントロールに比べて、患者では約1/10の量の遺伝子発現になっていた。この遺伝子はシナプスのNMDA受容体の機能に影響しており、発現量の違いはNMDA受容体の密度の低下につながっている可能性が考えられた。これらのことより、遺伝的要因のみならず、エピジェネティックな機構による統合失調症の発症機構の一部が明らかになりつつある。
すべて 2006
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Biological Psychiatry 59・5
ページ: 434-439