研究概要 |
耳垢が、乾型のヒト64人、湿型のヒト54人の合計118人のDNA試料を耳垢型決定のための試料として収集した。耳垢型は本人の自己申告によった。CAリピートあるいはSNPを用いてDNAタイピングを行い、乾型と湿型の両グループをλ^2検定によって比較した。その結果、ABCC12,ABCC11,LONPL,SIAH1の4遺伝子を含む約500kbの領域が候補領域として絞られたが、耳垢型が1遺伝子によって決定されるとの仮説とは矛盾が存在した。そこで、あらたに乾型のヒト88人、湿型のヒト38人の合計126人のDNA試料を耳垢型決定のための試料として収集した。耳垢型は実際に耳鏡で確認するとともに、綿棒で耳垢を採取し目視により判定した。ABCC11遺伝子のエクソン4内のSNP:rs17822931,LONP遺伝子イントロン12にあるrs6500380,LONP遺伝子イントロン14にあるss49784070が日本人で完全に連鎖不平衡となっており、湿型38人は全てGAまたはGGの遺伝子型で、乾型87人はAAであった。また、乾型1人はGAであったが、ABCC11遺伝子のエクソン29内に27塩基の欠失がみられた。これらの結果により、ABCC11遺伝子内のSNP(rs17822931:ABCC11遺伝子の表記でc538G>A)が日本人の乾型の耳垢型を決定していると結論づけた。細胞系を使ったABCC11遺伝子の機能解析でも乾型AアリルをもったABCC11タンパク質は、膜輸送能が欠落していることが確認されている。 耳垢型の遺伝子決定と同時に乳ガン患者の試料収集を行った。理由は、「乳汁吸飲物のなかの異型細胞は湿型の耳垢型のヒトに多い」との報告があって、癌と耳垢型の関連が示唆されていたからである。現在長崎大学腫瘍外科学講座との協力で91人乳ガン患者のDNA試料を収集した。
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