研究概要 |
<目的と現在までの経緯> ミニ染色体上の部位(テロメア側、セントロメア内、中間領域)における遺伝子発現の影響および染色体の安定性を検討するため、それぞれの領域にゲノム遺伝子(BAC)を導入できるミニ染色体を個別に作製した。ミニ染色体の改変は、DT40細胞(ニワトリpre-B細胞株)内で行った。 上記改変ミニ染色体へ、遺伝子発現ユニットをもつBAC(HPRT-66,F9-66)をCre/変異lox系を用いて導入した。導入効率は、約70%であった。PCR, FISH, PFGEにて完全かつ正確な導入を確認した。 <BAC導入ミニ染色体における遺伝子発現と安定性> HPRT遺伝子は、いずれのミニ染色体においても発現が認められた(RT-PCR)。 1)遺伝子発現の比較 ミニ染色体のテロメア側、セントロメア側、中間領域のそれぞれの領域に挿入されたBAC内遺伝子(HPRT)の発現について検討した。定量PCRによりそれぞれのクローン(DT40細胞)間の発現比較を行った。テロメア側にBACを挿入したクローンのヒトHPRT遺伝子発現を100とすると、セントロメア側挿入クローンでは83、中間領域挿入クローンでは122であった。発現量に関しては、大きな差はないと考えている。また、内在性HPRT遺伝子発現量に対し、ヒトHPRT遺伝子発現量は約15%であった。これは、宿主細胞の種の違いによると考えられた。 2)染色体安定性の比較 細胞分裂に伴うミニ染色体欠失率はそれぞれのクローン間で大きな差を認めず、約0.1%であった。これは長期培養(60日)後も、大きな変化を認めなかった。ミニ染色体の細胞核あたりのコピー数は、1コピー(約70%)または2コピー(約30%)がほとんどであった。 3)長期培養による発現変化の有無 長期培養による遺伝子発現は、テロメア側、中間領域挿入クローンで大きな変化はなかった。
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