難治性癌の代表である膵癌(浸潤性膵管癌)の高悪性度について、個体レペルでのメカニズムは解明されていない。そこで本研究では、ヒト膵癌の培養細胞レベルでの解析に加え、マウス異種移植系を用いた個体レペルでのヒト膵癌モデルを作成して、増殖進展・転移に関するras遺伝子およびNF-kB(nuclear factor-kappa B)遺伝子の機能を明らかにすることを目的とした。 【平成17年度実績】 1.リボザイムの作成: アデノウイルスペクターに組み込んだ活性型(変異型)K-ras遺伝子標的リボザイムの精製は順調に行われた。一方、NF-kB遺伝子標的リボザイムはアデノウイルスに組込めず、このリボザイムについての精製はなされなかった。 2.ヒト癌細胞株へのK-ras癌遺伝子標的リボザイムの導入: ヒト膵癌細胞株に対し、培養細胞レペルでアデノウイルスベクターに組込んだK-ras遺伝子標的リボザイムを感染導入し、時間依存的な導入状況を検討した。 【平成18年度実績】 1.ヒト膵癌細胞へのリボザイムの導入効果の検討: ヒト膵癌細胞株に対し、アデノウイルスペクターに組込んだK-ras遺伝子標的リボザイムを感染導入し、培養細胞レベルおよびマウス個体レペルでの影響を検討した。この結果、ras遺伝子は膵癌細胞のアポトーシス抑制と血管新生促進を介して膵癌の増殖進展・転移に関与していることが示唆された。 2.ヒト膵癌細胞へのclaudin-1遺伝子標的siRNAの導入: ヒト膵癌細胞に対し、細諮問密着結合を構成する因子claudin-1の遺伝子を標的としたsiRNA導入し、機能レベルでのclaudin-1抑制とMMP2発現低下が確認された。また膵癌細胞にTNF-αを処理することで、濃度依存的および時間依存的に内在性claudin-1発現が亢進することから、TNF-αが誘導するアポトーシスヘのclaudin-1関与が示唆された。 研究計画ではras癌遺伝子とともに転写因子NF-kBを標的とした機能解明も目標としたが、こちらの解析は本研究期間内に十分な成果をあげられず、今後の研究継続で解析をすることとする。
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