研究課題/領域番号 |
17590292
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
飯嶋 達生 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 講師 (40222799)
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研究分担者 |
野口 雅之 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 教授 (00198582)
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キーワード | 肺腺がん / 発がん / メチル化 / CpG island / AJマウス / KIF21A / Samd14 / NNK |
研究概要 |
平成18年度は以下の研究を行った。 1)肺腺がんの初期病変に形態的に類似した組織像を示すNMK(4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone)投与AJマウスに発生した肺腺系腫癌を対象として、正常肺組織に比して異常メチル化の見られる遺伝子を網羅的に解析した。マウス肺腫瘍および正常マウス肺組織からDNAを抽出しMethylated CpG island amplification法とSuppressive subtraction hybridaization法を行い、マウス肺腫瘍にのみメチル化のある117個の遺伝子を同定した。Quantitative RT-PCRにより、このうち3個の遺伝子(kinesin family member 21A(KIF21A)、sterile alpha motif domain containing 14)、EG436235(similar to regulator of G-protein signal 13))は正常マウス肺組織に比較して肺腫瘍での発現が有意に低下していた。 2)マウス肺腺系腫瘍で発現の低下していたこの3個の遺伝子についてヒト遺伝子のホモローグを解析したところKIF21AとSamd14の2個の遺伝子で相同な遺伝子がヒトに認められた。 3)この2個のヒト遺伝子について、まず直径2cm以下のヒト初期肺腺がん手術症例23症例で腫瘍部と非腫瘍部からそれぞれmRNAを抽出し、Quantitative RT-PCRによる遣伝子発現解析を行った。KIF21AおよびSamd14ともに腫瘍部は非腫瘍部に比較して有意に遺伝子発現が低下していた(p<0.05)。 4)ヒト初期肺腺がん23症例をその組織形態像から非浸潤がんと初期浸潤がんにわけて、KIF21A遺伝子発現の検討をおこなったところ、非浸潤がんに比べて初期浸潤がんでは有意な発現の低下を認めた(pく0.05)。このうちの15症例についてプロモータ領域のメチル化状態を検討したところ、非腫瘍部ではメチル化は殆ど見られないが、腫瘍部ではメチル化の頻度が高かった。 以上、本年度の研究ではAJマウスのNNKによる肺腺系腫瘍で異常メチル化が見られ、発現の低下している遺伝子を3個明らかにし、ヒトの相同遺伝子KIF21AおよびSamd14の2個の遺伝子はヒト肺腺がんで発現の低下が認められ、かつ非浸潤がんより浸潤がんでより発現の低下が見られることからこれらの遺伝子のメチル化ががんの進行に関与する可能性が示唆され興味深い結果と考えられた。
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