研究概要 |
肺腺癌の早期に過剰メチル化が起こる遺伝子を明らかにするために4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone(NNK)投与A/J mouseモデルにおける肺腺腫と正常肺から抽出したDNAの間でmethylated CpG island amplification(MCA)法、modified suppression subtractive hubridization(SSH)法、methylation-specific PCR(MSP)法を行って解析している。SSHの結果930クローンを選別し、核酸のシークエンスを行ってホモロジー検索を行い、最終的に107つの異なったクローンが存在することが明らかになった。これをさらにBLAST検索するとこの中に4つの遺伝子が含まれていることが分かったが、その中でヒト相同遺伝子はKIF21A,SAMD14,VWA1の3つだった。そこで18例の小型ヒト肺腺癌と9例の非癌肺組織を用いて2遺伝子の発現量を解析すると腺腫では非癌肺組織に比して有意に発現量が減少していた。特にSAMD14遺伝子についてMSP法にてそのプロモーター領域のメチル化を検索すると、肺腺癌の33%(8/24)で過剰メチル化が起こっているのに対し、非癌肺ではメチル化を認めなかった(0/24)。また肺腺癌におけるSAMD14遺伝子の過剰メチル化がそのmRNA発現に関与していることを肺腺癌細胞株と不死化気管支上皮細胞株を用いて明らかにした。以上より、ヒト肺腺癌の初期にSAMD14遺伝子のプロモーター領域に特異的な過剰メチル化が起こることが明らかになった。今後、SAMD14の機能解析をさらに進めることによって肺腺癌の診断治療に応用していきたい。
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