研究概要 |
(1)肺胞上皮癌5例、混合性肺腺癌23例(肺胞上皮癌成分あり)、浸潤性肺腺癌20例(肺胞上皮癌成分なし)からなる組織アレイを構築した。(A)細胞周期関連分子Ki-67,p16,p21,p27,cyclin D1,cyclin E,(B)癌抑制遺伝子p53,Rb, E-cadherin, PTEN, TSLC1,Smad4の免疫染色を行って3群間で比較し、肺胞上皮癌→混合性肺腺癌→浸潤性肺腺癌という肺腺癌の進展経路の過程でおきる遺伝子異常について検討した。その結果、(A)p16,p27,PTEN, E-cadherin, TSLC1の発現低下が浸潤性肺腺癌において有意に高頻度でおきること、(B)cyclinD1の発現亢進は浸潤性肺腺癌よりもむしろ混合性肺腺癌で高頻度に認められること、(C)Smad4の発現低下は混合型肺腺癌の段階ですでに高頻度に認められることを見出した。 (2)末梢小型肺腺癌の辺縁部(n=7)、中心部(n=6)、正常部(n=5)の遺伝子発現プロファイルのデータからsignature解析を行った。その結果,上皮間葉転換や低酸素現象により誘導される遺伝子セットが腫瘍中心部で発現亢進することを明らかにした。 (3)低酸素環境が肺腺癌細胞に及ぼす生物学的影響を検討するため、肺腺がん細胞株A549を低酸素下で培養したところ、細胞の遊離、紡錘形化、運動能の亢進が認められた。網羅的遺伝子解析の結果、低酸素下で培養した細胞では(A)細胞周期に関連した分子、(B)DNA修復に関連した分子、(C)細胞外基質の合成沈着に関連した分子、(D)血管新生に関連した分子などの発現変化に加え、EGFRの発現亢進が認められた。EGFRに着目しその阻害剤の影響をみたところ、低酸素ストレスによる細胞の形態変化と運動能亢進が強力に抑制された。
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