腫瘍細胞が腫瘤を作らず体腔液中で増える特徴をもつ原発性体腔内リンパ腫(PEL)患者から樹立した2種類の細胞株において、通常のHQバンド分析と染色体特異的ペインティングプローブを用いたFISH解析の結果、OS-1株では第5染色体上に、PSu株では第17染色体上に1q断片の挿入を認めた。さらに両腫瘍細胞株DNAと正常細胞DNAを用いたCGH法による解析から1q増幅領域はOS-1株では1q21-q25、PSu株では1q25-q32と推定された。共通増幅領域と推定された範囲内を詳しく同定するために1q21-q32領域約53Mbにわたるコスミド、YAC、BACクローンによるFISH解析を施行した結果、OS-1株はA-B-C-B-Aタイプ(1q21→1q31←1q21)の、PSu株はC-B-A-B-C(1q32←1q31→1q32)タイプの重複ユニットから構成されていることが明らかになった。また、PSu株では1q31.3にマップされるBACクローンRP11-472J21が3コピー以上増幅していることもわかった。この領域の増幅や1qトリソミーはAMLやCMLなど種々の血液系腫瘍や固形腫瘍においても報告されており、この領域に腫瘍特異的遺伝子変化が起こった結果、浮遊性の癌細胞になったと考えている。PEL両株における1q増幅が共通メカニズムに基づいている可能性を考えて、1q31.3-q32.1領域の重複複製起点を同定するためにより狭い領域の詳細なBACクローンFISH解析を進め重複複製起点に近づいているが、切断点に位置するゲノム断片はまだ同定できていない。高感度冷却CCDカメラの導入により解析効率が向上し、本研究以外にもATMノックアウトマウスのMEF細胞や軟骨形成不全ラットのgenetic instability検出で成果が出ており現在論文投稿中である。
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