2年間で得られた結果は以下のとおりである。統計学的検索にはx^2検定を用いて、p値0.05以下を有意差ありとした。 1.胃癌431例について、EBV encoded small RNA1(EBER1)In situ hybridizationにより23例のEBV陽性胃癌を得た。陽性率は5.3%で、従来の報告と同程度の陽性率であった。 2.胃癌431例について抗p53抗体による免疫染色を行った結果、陽性150例、陰性281例の結果を得た。陽性率は34.8%で、この比率は従来得られている報告と同程度であった。EBV陰性408例ではp53陽性は148例で陽性率が36.3%であったのに対して、EBV陽性23例ではp53陽性は2例で陽性率が8.7%であった。EBV陽性例では統計学的に有意にp53陰性が多いという結果が得られた。 3.Codon72の遺伝子多型について183例の検索を行った。95例はarginine(arg)型で、10例がproline(pro)型、78例がarg/pro型であった。EBV陰性160例ではarg88例、pro10例、arg/pro62例であるのに対して、EBV陽性23例ではarg7例、proO例、arg/pro16例であった。arg/pro型の比率はEBV陽性例では69.9%、EBV陰性例では38.7%で、EBV陽性例でその比率が統計学的に有意に高い傾向にあった。 以上の結果から、EBV陽性冒癌はp53の発現が陰性のものが多く、codon72はarg/pro型が多い傾向にあった。p53発現陰性の多い理由として、p53遺伝子レベルでの異常、すなわち、ナンセンス型突然変異やフレームシフト型突然変異などが多い可能性が考えられたので、EBV陽性23例と性と年齢をマッチさせたEBV陰性例についてp53の突然変異の検索を行った。ホモ接合型変異の頻度には差がないことは確認できたが、EBV陽性例では、近位に複数の変異のあるものが多い傾向にあった。そのことがp53発現陰性の多いことと関係しているのかもしれない。現在、EBV陽性例でarg/pro型が多い理由を明らかにするために継続して研究を進めている。
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