研究概要 |
肺癌におけるEGF receptorの異常とその下流因子の活性化 EGFR遺伝子の増幅と点突然変異、EGFR、Stat-3,Akt and Erk1/2の活性化(リン酸化)の関係を28例の肺癌を使って検討した。EGFRの増幅の見られた5例では、EGFR蛋白の発現のリン酸化の亢進、およびStat-3の活性化が認められた。点突然変異は5例にみられEGFR蛋白の発現のリン酸化の亢進があり、このうち4例ではAktの活性化があった。残りの19例中4例でEGFR蛋白の発現のリン酸化の亢進があったが、特定の下流因子の活性化との相関は見られなかった。しかしながら、Stat-3かAktのいずれかの活性化がみられた。以上の結果は、EGFR遺伝子の増幅によるEGFR蛋白の過剰発現ではStat-3が最も重要な活性化下流因子であることを示した。これに対し、EGFRの突然変異は恒常的にAkt系の活性化をもたらすと考えられた。またEGFR遺伝子の異常の多くは相反する下流因子の活性化をもたらすことが明らかになった。 骨軟部腫瘍におけるEGF receptorの異常とその下流因子の活性化 EGFR遺伝子の異常と下流因子の活性化〔リン酸化〕の関係を29例の骨軟部腫瘍について検索した。免疫染色では23%の肉腫にEGFRの過剰発現があり、このうち47%にEGFR蛋白のリン酸化の亢進が認められた。EGFR遺伝子の高度増幅のみられた悪性繊維性組織球腫の2例では蛋白の過剰発現と共にStat-3活性化がみられた。ミスセンス変異は3例にみられ、このうち2例でEGFRとStat-3の活性化があった。残りの症例でEGFRの過剰発現は見られたが、活性化は肉腫のみにみられた。3系の下流因子を比較すると、Stat-3やErk1/2に比べてAktの活性化の頻度が最も高く、Stat-3の活性化は上皮様性格を有する肉腫で頻度が高かった。 以上からEGFRの高度増幅→過剰発現ではStat-3の活性化が最も重要であり、EGFRの点突然変異ではかならずしも特定の下流因子の活性化と結びつかないと結論された。
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