研究概要 |
恒常的なプロモーターのもとで発癌を来す染色体転座は種々の腫瘍の発生に重要な役割を果たしている。最近の研究で多発性骨髄腫の5-10%においてt(14;16)(q32;q23)染色体の転座によりc-MafがIgH遺伝子座に融合を来すと言う報告がなされた。その結果癌遺伝子であるc-Mafは最近およそ骨髄腫の50%程度で過剰発現していることが明らかとなった。そしてc-MafはcyclinD2活性を促進していると言う役割が示唆されている。我々は従来RT-PCRによって種々のT細胞リンパ腫においてc-Maf発現を検討し、angioimmunoblatstic T cell lymphoma(AILT)で著しいc-Maf発現を見た。我々はそこでT細胞リンパ腫につきc-Maf発現とcyclin発現を免疫組織学的に検討した。興味あることにc-Maf発現はAILTの20/28で、ATLの3/11、非特定末梢性T細胞リンパ腫の3/15,菌状息肉症の0/11で発現が認められた。AILTの二重染色を行ったところ、c-Maf陽性細胞の大部分はCD43(MT1),およびCD45RO(UCHL-1)陽性であったが、CD20(L26)は陰性であった。二重染色ではまたCD4陽性細胞の大部分はまたc-Maf陽性であったがCD8陽性細胞の大部分はc-Maf陰性であった。またcyclinD1およびD2は多くのc-Maf陽性AILT症例で過剰発現が見られたが、c-Maf発現におけるcyclinの役割についてはこれからの研究に待たれる。これらの研究結果はAILTの病態発生における新たな視点を提供するものであり、同時にc-MafがAILTの有効なマーカーである事を示唆するものと言える。
|