研究課題
1: CARP陽性糸球体腎炎の臨床病理学的解析これまでに蛋白尿のレベルと糸球体のpodocyteにおけるCARP発現の間に強い正の相関が存在し、臨床的には特にループス腎炎において、podocyteでのCARP陽性症例と陰性症例の蛋白尿のレベルに相関があることを見出した。同時に、腎炎惹起の動物実験によって、腎炎惹起の刺激物質により、マウスの糸球体のpodocyteでも同様にCARPの発現が誘導されることを見出した。これらの結果をまとめ、報告した。(Matsuura K. et al., Human Pathol.,2007)また、これまで上皮細胞株を用いたin vitroでの実験から、CARPが腎炎惹起に用いたLPSの刺激により発現誘導され、細胞辺縁部のラフリング部位においてF-アクチンと共局在することを見出している。またLPS以外の腎障害誘導物質と考えられている、angiotensin IIあるいはadriamycinなどにより、刺激後の細胞形態ならびにF-アクチンの細胞内局在を観察した。また、angiotensin IIに関しては、特異的阻害剤であるangiotensin receptor blocker(ARB)を多種類用いることにより、形態変化やCARPの発現誘導に対する効果を検討した。LPSと同様、angiotensin II, adriamycin両者によってもCARPは誘導され、形態変化をもたらしている。ARBはangiotensin IIによる形態変化は抑制したが、CARPの発現誘導に対する抑制効果はARBの種類により異なった結果が得られた。マウスを用いたin vivoでのangiotensin IIによる刺激でも、比較的in vitroの結果に類似したCARP誘導あるいはARBによるCARP誘導の抑制効果がみられた。2:尿中CARP蛋白質を検出するためのELISAキットの作製ある種の糸球体腎炎で尿沈査にpodocyteが見られることが知られていることから、種々の糸球体腎炎の尿中にみられるCARP陽性podocyteの同定を免疫染色により行ったところ、CARP陽性のpodocyteが少数ながら認められることがわかった。ELISAキットの作製の目的でCARP monoclonal抗体の作製を試みたが、これまでには、ELISAに使用できるmonoclonal抗体は得られていない。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
Human Pathology 38
ページ: 410-419
Modern Pathology 20
ページ: 199-207
Southern Medical Journal 100(2)
ページ: 218-221
Pathology International 56
ページ: 372-375