我々は自己腫瘍由来の熱ショック蛋白質HSPは、腫瘍特異抗原ペプチドを結合しており(HSP-ペプチド複合体)、これを動物に免疫すると腫瘍特異的免疫を誘導することができ、HSPを用いた癌の免疫治療有効性について世界に先駆け報告してきた。これは樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)によるクロスプレゼンテーションを介する腫瘍特異的T細胞の活性化によることを明らかにしてきた。なかでもHsp90は細胞質内に最も豊富に存在するHSPであり、クロスプレゼンテーションを介する免疫応答に重要な役割を果たしていると考えた。実際Hsp90-抗原複合体は、樹状細胞に非常に効率良くtargetingできることを示し、癌抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化することを明らかにしてきた。この際、Hsp90-抗原複合体は樹状細胞上に発現していると考えられるHsp90特異的な受容体を介する、エンドサイトーシスにより取り込まれていることを見出した。本研究では、ヒト樹状細胞に発現しているHsp90受容体を同定し、Hsp90によるクロスプレゼンテーションのメカニズムを明らかにすることを目的とした。AlexaラベルしたヒトHsp90をプローブとして、ヒト樹状細胞より調製したcDNAライブラリーを用いて発現クローニング法により、Hsp90受容体の候補分子を同定した。この分子は分子量58kDaの小胞体膜局在分子であった。小胞体に局在すると報告されているが、特異的抗体を用いてマウスおよびヒト樹状細胞(K.G-1)のFACS解析を行ったところ、細胞表面上での発現を確認した。今回同定したHSP結合分子が小胞体局在分子で、樹状細胞でのみ、細胞表面に発現していることは興味深く、この分子がHsp90によるクロスプレゼンテーションの受容体として機能しているかについて検討を行っているところである。
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