研究概要 |
1.胸腺MALTリンパ腫は臨床病理学的に特異な腫瘍である.この腫瘍を免疫グロブリン遺伝子の観点から解析したところ,特徴的なVH遺伝子断片の選択性,低い体細胞変異が明らかとなった.この結果は,胸腺MALTリンパ腫が遺伝子学的にも特異な腫瘍であることを示唆している(JPatho12006). 2.胃MALTリンパ腫を除菌反応性とAPI2-MALT1キメラ遺伝子から3群に分類し,それぞれの群の免疫グロブリン遺伝子の特徴を明らかにした.その結果,胃MALTリンパ腫は体細胞変異率が高いこと,ongoing変異の頻度は低いこと,除菌反応群は特徴的なVH遺伝子断片を有することを明らかにしたModPathol2007). 3.除菌後,高悪性度リンパ腫に進展した胃MALTリンパ腫を遺伝子学的に解析したところ,両者の間に共通するクローン性は得られなかった.この知見は,後者から前者への経路以外の経路があることを示唆している(lwano M, Inagaki H, et al.Am J Gastroenterl 2006). 4.MALTリンパ腫の類縁腫瘍である節性辺縁帯B細胞性リンパ腫について,本邦症例と欧米症例を臨床病理学的に検討したところ,本邦症例では比較的良好な臨床経過をたどることが明らかとなった.また大細胞成分の有無が予後に影響を与える因子であった(Cancer Sci 2007). 5.MALTリンパ腫の分子生物学的および臨床病理学的解明はこの10年で大きく進んだ.その進歩について総説にまとめた(Pathollht, inpress).
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