研究概要 |
本研究は、形態学的に多彩な組織像を呈するglioblastomaが、遺伝子変異の点でも多様性を示すと考えられ、再発、悪性転化という治療を考えるうえで重要な因子でありながら、そのメカニズムや臨床病理学的意義について十分な解析がいまだ行われていない点に着目し、組織像と遺伝子変異との関連を解析することを目的とする。 【研究の成果】 1.Astrocytic component、oligodendroglial componentの形態を示すそれぞれの部位からDNAを抽出して検索すると、low-grade gliomaではいずれの形態を示す部位でも同様の遺伝子変異パターンを示した。一方high-grade gliomaでは両componentで異なる遺伝子変異を示すことが多く、1p/19qのLOH, p53mutation共に検出されるなど組織多様性を反映していた。 2.組織多様性を示すglioblastomaでは、pseudopalisading(PP)、microvascular proliferation(MVP)、small cell(SC)、giant cell (GC)の形態を示す各部分を検索した。primary glioblastoma、secondary glioblastomaともに、各組織像でのphenotypeの違いによって、異なるgenotypeを示す症例が多数みられた。PPやSCだけでなくMVPの細胞でも遺伝子変異が高頻度で認められ、特に抗癌剤耐性に関与するO^6-MGMTのメチル化の様なepigeneticな変異がMVPのみでみられる症例であり、治療法の選択には遺伝子変異の多様性も考慮する必要性があると考えられた。 臨床病理学的な診断には遺伝子解析も必要な場合もあり、組織像ごとの遺伝子解析が今後の治療法に反映される可能性が示唆された。
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