研究概要 |
胃癌にて切除された胃全摘出検体100例について5mm幅の全割標本を作製し、顕微鏡的GISTの真の発生頻度について検討を行ったところ、KITないしCD34陽性を示す顕微鏡的GISTを35症例50病変見出した。また、KIT, CD34陰性、desmin陽性を示す顕微鏡的平滑筋腫は28症例51病変認められ、12症例では顕微鏡的GISTと平滑筋腫が併存していた。遺伝子増幅可能であった顕微鏡的GIST25例にっいてc-kit遺伝子exon 11の変異解析を行ったところ、2例に臨床的GISTでしばしば報告されている領域の遺伝子変異(V559D, de1557-561)を認めた。顕微鏡的GISTの90%は胃上部の固有筋層に認められ、臨床的GISTの発生部位と一致した。顕微鏡的平滑筋腫も胃上部に発生が見られた。 以上の結果から、我々が見出した顕微鏡的GISTは臨床的GISTの初期病変と考えられた。しかし、一般的に臨床的GISTの発生頻度は10万人に1-2人とされており、これと比較して本研究で見出した顕微鏡的GISTの発生頻度はきわめて高い。顕微鏡的GISTのごく一部のみが臨床的GISTに進展するものと考えられるが、それには、c-kit遺伝子変異に加えて、他の遺伝子変化が不可欠であると考えられた。今後、このメカニズムを解明することがGIST治療におけるあらたな診断基準の確立、分子標的治療ターゲットの発見に繋がるものと考え、現在、解析を進めている。
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