研究概要 |
GISTの診断、治療、解析を行うにあたり、その前提となるKITの発現を正確に評価することは必須であるが、KIT免疫染色についてはその精度に疑問を呈する報告が複数されている。そこで複数の抗KIT抗体(ウサギポリクロナール抗体A458,ウサギモノクロナール抗体Y145、マウスモノクロナール抗体(T595,1DC3,K45)についえGISTを含むKIT発現腫瘍およびKIT陰性腫瘍について検討、問題点について考察を行った。A458,Y145についてはいずれの腫瘍においても高い感度と特異性が見られたが、A458ではKIT陰性腫瘍において、若干非特異的陽性像が観察された。1DC3,K45はいずれもホルマリン固定材料において感度が低く、通常の診断には不適当と考えられた。T595は一部のホルマリン固定材料において良好な陽性像が観察されたが、この抗体は肥満細胞におけるKIT発現を認識するものの、GIST前駆細胞と考えられるカハール細胞を認識することができない。GISTも陽性を示す症例と陰性を示す症例があり、免疫組織化学的なピットーフォールと考えられた。現段階では、GISTの診断、解析にはA458ないしYl45が適当であると考えられる。 GIST35例について、9種類の癌関連CpG領域(p15,p16,p73,MGMT,E-cadherin,hMLH1,MINT(methylated in tumors)1,MINT2,MINT31)の異常メチル化の検討を、Methylation specific PCRで行った。c-kit遺伝子変異例25例では平均28.4%、PDGFRα遺伝子変異例7例では平均25.4%に異常メチル化が認められた。遺伝子変異のない症例3例では5領域に平均37.0%の異常メチル化を認め、変異有症例に比べて高率な傾向を認めた。また、遺伝子変異のない症例ではいずれも3領域異常に異常メチル化を認め、他の遺伝子変化の存在が考えられた。CpG領域別では、ミスマッチ修復遺伝子であるhMLH1で60%と最も高率に異常メチル化を認めた。これらの異常が遺伝子不安定性に関与し、GISTの発生、悪性化に関与している可能性が示唆される。
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